イチオシレビュー一覧

今となっては、超人気の書き手である彼女の、これは初期の方の作品に入ると思う。

最近の彼女の作品の文章の洒脱さとキレと情緒の完成度は文句のつけようがないが、自分は、彼女の初期のこうした小さなエッセイもとても好きだ。
既にこの初期の短いエッセイで、彼女の文章の原型、原石とも言える輝きがあるからだ。

細かい書き込みはないのに、ツボを押さえたワンフレーズで、読者を一気にその場所に引きずりこむようなリアリティを文章に持たせるセンスの良さ。余韻の残る、文章の終わらせ方。

達者な書き手である彼女は作品によって様々な色を見せ、時に文章の鋭い棘も見せるが、なんとなく、この作品の彼へ向ける眼差しのような優しさが、彼女の文章の根底にはある気がする。