イチオシレビュー一覧

タイトルはヒロインの心の叫び。

もし自分の身内がヒーローだったらどうします？
しかもそれを自分には隠しているの。
どうやらそれは争いに巻き込まないための配慮みたい。

普通のお話なら身内がヒーローなんて誇らしいこととして描かれるかもしれない。
が、しかし。

このお話はとても現実的な側面から語られる。
敵がそんなこと、同じように配慮してくれるわけがない。
ヒーローの弱点として狙われまくる妹・凛和(りんか)。

兄が活躍する裏で綱渡りな命がけの生活を送り、腹をくくった彼女の選択を見て欲しい。
そして、その覚悟の美しさも。

それぞれのキャラがとてもリアルな感情を持って描かれるローファンタジーであり、凛和の成長を捉えた青春の群像劇。
まるで目の前で起こっているかのように思い描くことができるアクションシーンも特徴的。

このお話を読んで思うこと。

闘いは、決してヒーローだけのものじゃない。

弥生凜和は、ごく普通の女子高生。
しかし彼女の家庭と素性は普通ではありません。
なんたって兄が（自称）ヒーローなのですから。
いちばん近くで暮らす以上、戦いにも騒動にも巻き込まれる。痛い目にだって遭う。お願いです、私を巻き込まないで！
──本作はそんな導入から始まる、笑いあり、バトルの迫力あり、涙もあれば可愛さもありの青春活劇です。

軽い文体の作品です。ほんの少し覗いただけでは、底の深い作品には見えないかもしれません。
そこらの敵など簡単に蹴散らすヒーローの兄を持つ凜和は、悪役たちにとって格好の餌食。ただ妹というだけで散々な目に遭いながら、彼女は兄たちヒーロー仲間、クラスメート、そして数多の悪役たちと少しずつ心を交わしてゆきます。
青春群像劇であり、成長譚。斜に構えた視点でありながら、本作はれっきとした王道の小説なのです。
現時点で２０万文字と、読み応えも十分。読み始めるなら今ですよ！