イチオシレビュー一覧

いきなりですが、SFというジャンルは好きですか？
正直、手に取りにくい人もいるかと思います。
専門用語の応酬、堅苦しい設定、想像できない場面。
空想上の舞台がこのジャンルの基本となりますが、物語の背景はおろそかにできない、そんな葛藤の中でSFという作品たちは生まれます。

この作品『グラッジブレイカー！』は一味違います。

作者様の心がこの作品の中には存在します。
物語を読ませて楽しむ、ではありません。物語を一緒に楽しめる、それがこの作品であり、執筆される作者様の書き方でもあります。
それが文字を介して、今まさに目の前に広がる光景が見えるのです。
ものすごいエンターテイメント性が詰まった作品、それがこの『グラッジブレイカー！』です。

だからこそ、あえて言います。
「私はこの作品が好きだ！　もっともっと楽しませてほしい！」

この気持ちがどうか多くの人の心にに届くことを祈っております。

宇宙の海を旅するは、誰もが夢見たことだろう。
最高にして最大の秘境。大冒険の香り漂うフロンティア。
宇宙世紀の開幕を待ち侘びて、君が欲していた世界。
その空間を自由に飛び回る、そんな翼こそが本作品だ。

開始十行で溢れ出るは、古き良きキーワードの数々。

改造された密輸船に跨るは、元エースパイロット。
太陽系辺境軍に封鎖突破船(ブロッケードランナー)。
高性能な少女型AI『ノエル』に、謎の『のじゃ美少女』。
おまけに、エメラルドグリーンの火星ウィスキー。

これでワクワクしないことがあろうか。いや、ない。
好奇心の塊のような仕掛けをこれでもかと詰め込んである。
君は今すぐにでも宇宙空間へ放り出された感覚に陥るだろう。

いつかはスペースオペラの主役になりたい。
そんな浪漫満載な作品が、今ここに花開く。

面白い物語というものは、序文から面白い。
この理屈は認知バイアスのようで、実は結構当てはまる。
特にSF作品において、ほとんどこの『お決まり』を逸脱することはない。

そうだ。作品に浸るのに過剰なレトリックなど必要ない。
文も世界観もガジェットも直球だ。直球でいい。

運送も戦争も何でもござれの借金まみれの主人公。
表情すら脳裏に浮かぶ可愛いAI。腐れ縁の輸送業のおっさん。なぜか不老の美少女。
主人公が駆る改修済みの封鎖突破船（ブロッケードランナー）。アンダーグラウンド臭がする自由貿易都市。

真の妙は、卓越した構成——すなわち情報の配列と密度と選択により生まれる。この作品を読めば、それを理解させてくれる。

この軽妙な筆致を是非、御覧頂きたい。