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暗黒のヴェールに包まれたゴシックファンタジー

  • 投稿者: 雪蛍   [2017年 03月 06日 18時 15分]
その国では黒は不吉な色。忌むべき色だった。

闇夜を溶かしたかのような黒い髪と、瞳を持つ少女フゥディエは、城の冷たく暗い牢屋に閉じ込められた三つの頭と蛇の尻尾を持つ化け物の番人。

足に枷をつけられた化け物と、不自由な右足を引きずって歩く少女は互いに傷を舐めあい、一生をこの薄汚い鳥籠の中で暮らしていくのだと思っていた。

だが、恋人に贈り物をするテルーニの日という風習があるこの国で、フゥディエは化け物に贈り物のケーキとブレスレットを持って牢屋へと急いでいる途中、彼女の右足を傷つけた王弟殿下ヴァルと出会ってしまう。

瞳に激しい愛憎を浮かべ、ケーキを踏みつけたヴァルはフゥディエに接吻をする。『ーーお前は私のものだ』嫌悪感と共にフゥディエの中を駆け巡る衝動。『ーーもっとちょうだい』

そしてフゥディエは化け物アクスと共に逃亡を始める。彼女達の行方は果たしてーー。
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