イチオシレビュー一覧
▽レビューを書く奇跡の短編。唯一無二。名作中の名作。どうすればこんな絶妙な物語になるのか。もう二度とこんな作品にはお目にかかれないんじゃないか。読むにつれて鳥肌が立つ。読むにつれて身が震える。読み終えたときには呆然としてしまう。そしてまた読む。感嘆を新たにする。書き手としてこの世界観を描いた作者に嫉妬してやまない。読み手としてこの作品に出会えたことを感謝してやまない。
何よりも。
たくさんのレビュー、感想が本作を称賛しているが、人それぞれに受け止めようが違う。千差万別の感動を与えているあたり、とんでもない作品であるのを物語っている。
何よりも。
たくさんのレビュー、感想が本作を称賛しているが、人それぞれに受け止めようが違う。千差万別の感動を与えているあたり、とんでもない作品であるのを物語っている。
山にむかいて目を挙ぐ子らの……
- 投稿者: 退会済み [2016年 04月 23日 14時 14分]
管理
親からの愛を受けられない『ぼく』は、同じ境遇でありながら、どこか自分と違う『彼』と出会う。
そして彼の『おれたち、実は妖精の子なんだよ』という言葉をきっかけに、主人公は妖精の王国に強く、強く惹かれてゆく。
『子供よりも親が大事』
そんな言葉で締めくくられる小説がある。太宰治の名作『桜桃』である。私は八雲氏の『フェアリィ・チャイルド』を読んだあと、この作品のことを思い出していた。
親はいい。子どもに贅沢なものを食べさせないということができる。しかし子どもは違う。彼らは少なくとも幼いうちは、親のくびきから逃れられない。だから子どもは夢を見るか、大人になるかしかない。そしてその夢の世界へ行くためには、現実から飛び立たねばならないのだろう。
『桜桃』の冒頭には、旧約聖書の一節『われ、山にむかいて、目を挙ぐ』が引用されている。山にむかいて目を挙げた先には、妖精の王国が見えるだろうか。
そして彼の『おれたち、実は妖精の子なんだよ』という言葉をきっかけに、主人公は妖精の王国に強く、強く惹かれてゆく。
『子供よりも親が大事』
そんな言葉で締めくくられる小説がある。太宰治の名作『桜桃』である。私は八雲氏の『フェアリィ・チャイルド』を読んだあと、この作品のことを思い出していた。
親はいい。子どもに贅沢なものを食べさせないということができる。しかし子どもは違う。彼らは少なくとも幼いうちは、親のくびきから逃れられない。だから子どもは夢を見るか、大人になるかしかない。そしてその夢の世界へ行くためには、現実から飛び立たねばならないのだろう。
『桜桃』の冒頭には、旧約聖書の一節『われ、山にむかいて、目を挙ぐ』が引用されている。山にむかいて目を挙げた先には、妖精の王国が見えるだろうか。
私の胸には痣があって、そこに触れられると痛むのです。
広い大きな河をたった一人で渡っていたと思ったら、同じ胸の痣を抱えてじっと前を見つめている仲間がいたのです。
人の世界でいきるならば、妖精として死なねばならない。
妖精として生きるならば、人として死ななければならない。
この物語の主人公に名前はない。
この物語の舞台はどこであるかの明記もない。
物語を読んだとき、私はケルトの香りを感じた。
妖精のとりかえっこ。妖精として生きるため死を選んだ少年少女。
印を失わなかったら、いつかあの国へ行くことが出来るのだろうか?
あなたの胸には、今もあの痛烈な痛みは残っているのだろうか?
読んでみて下さい。そして、この痛みを忘れないでいて欲しい。
広い大きな河をたった一人で渡っていたと思ったら、同じ胸の痣を抱えてじっと前を見つめている仲間がいたのです。
人の世界でいきるならば、妖精として死なねばならない。
妖精として生きるならば、人として死ななければならない。
この物語の主人公に名前はない。
この物語の舞台はどこであるかの明記もない。
物語を読んだとき、私はケルトの香りを感じた。
妖精のとりかえっこ。妖精として生きるため死を選んだ少年少女。
印を失わなかったら、いつかあの国へ行くことが出来るのだろうか?
あなたの胸には、今もあの痛烈な痛みは残っているのだろうか?
読んでみて下さい。そして、この痛みを忘れないでいて欲しい。
できれば私も言葉を尽くしてこと物語を褒め尽くしたい。ただ、一言「感動した」と言い残すのがひどく躊躇われる。しかしそれに何かが追いつかない。その不足が恨めしい。
幼き頃のやりとりが、大人になるにつれて切なさとして胸にこみ上げてくる。 これを読み終えた時に、自分はそんな時代があったのだろうか、だとしたら自分は大人になっているのか。大人になるってどういうことだ。そんな問いかけばかりがぐるぐると渦巻く。
ただ、そこに痛みがある。成長と諦め、取り返しのつかない不可逆の変化に親友からの言葉が刺さる。
少なくとも、私はこれが読めてよかった。
これは私の感想にすぎない。
だからどうか、新鮮な気持ちのままにどうかこの短編を開いてほしい。
最後に問うとするのなら。
逃げることは罪だろうか?
幼き頃のやりとりが、大人になるにつれて切なさとして胸にこみ上げてくる。 これを読み終えた時に、自分はそんな時代があったのだろうか、だとしたら自分は大人になっているのか。大人になるってどういうことだ。そんな問いかけばかりがぐるぐると渦巻く。
ただ、そこに痛みがある。成長と諦め、取り返しのつかない不可逆の変化に親友からの言葉が刺さる。
少なくとも、私はこれが読めてよかった。
これは私の感想にすぎない。
だからどうか、新鮮な気持ちのままにどうかこの短編を開いてほしい。
最後に問うとするのなら。
逃げることは罪だろうか?
子供のころ、たまにテレビで流れてくるファンタジー作品のきらめきは、私たちの心を癒やしたことだと思う。
そんな私たちがあこがれを捨てたのはいつからだっけ?
嫌なことからの避難所がファンタジーだったのに。
見たいものを映し出す力こそがフィクションだったのに。
大人になったつもりの私たちは、宝物を捨ててしまったことに気づいていなかったに違いない。
気づいた時にはいつも遅いのに。
この主人公は大人になったつもりの私たちの歪な鏡だ。
ネバーランドの住人だと信じきれなかった私たちの似姿だ。
儚いタッチで描かれる青年の姿は、似ても似つかぬようにみえるけど、私たちと同じ、夢の国を信じきれなかった哀しい男の子なのだ。
胸の底に溜まった幻想の国の残滓を掘り返し、こんな時代もあったねと、私たちに思い出させてくれるスコップ。
それがこの、「フェアリィ・チャイルド」だ。
そんな私たちがあこがれを捨てたのはいつからだっけ?
嫌なことからの避難所がファンタジーだったのに。
見たいものを映し出す力こそがフィクションだったのに。
大人になったつもりの私たちは、宝物を捨ててしまったことに気づいていなかったに違いない。
気づいた時にはいつも遅いのに。
この主人公は大人になったつもりの私たちの歪な鏡だ。
ネバーランドの住人だと信じきれなかった私たちの似姿だ。
儚いタッチで描かれる青年の姿は、似ても似つかぬようにみえるけど、私たちと同じ、夢の国を信じきれなかった哀しい男の子なのだ。
胸の底に溜まった幻想の国の残滓を掘り返し、こんな時代もあったねと、私たちに思い出させてくれるスコップ。
それがこの、「フェアリィ・チャイルド」だ。
このうえないことで、些細なこと。
情は小さくても大きくても、その意味を誇るから湯立った風呂のもやみたいに体を覆ってしまう。そのまま、ただただ苦しくて熱くなる。それが泣くってことだろうけれど。踏みしめることは確かなことだもの。歩く先には、きっときらきら。噛みしめすぎて陽の光を感じない切なさもなかった。輝いて見えました。優しくてよかった。
お見事!!!!
すばらしい作品をありがとうございました。
情は小さくても大きくても、その意味を誇るから湯立った風呂のもやみたいに体を覆ってしまう。そのまま、ただただ苦しくて熱くなる。それが泣くってことだろうけれど。踏みしめることは確かなことだもの。歩く先には、きっときらきら。噛みしめすぎて陽の光を感じない切なさもなかった。輝いて見えました。優しくてよかった。
お見事!!!!
すばらしい作品をありがとうございました。
──「おれたち、実は妖精の子なんだよ。」
隣に越してきた子に、ある日そう告げられたことは、既存の世界観を大きく揺るがしてゆく……。
両親からの待遇に納得ができず、居場所を見いだせなくなっていた主人公の少年は、「自分は妖精の子」だと主張する隣の子の影響を受け、少しずつ「現実とは異なる夢の世界」を思い描くようになる。
しかし少年は分かってはいなかった。妖精の存在を信じることの、本当の意味を。
現実逃避の過程で偶然会った隣の子に告げられた、少年の「失格」。隣の子は「妖精」となり、この世から消え去る。現世に残された少年がその真実に気付き、甘んじてそれを受け入れ始めた時、隣の子は再び少年の前に現れ……。
コドモはなぜ、夢を見るのか。
なぜオトナとコドモは、違う世界観の中で生きるのか。
オトナって、コドモって、何なのか。
読後に思わず考えさせられる、深くて、どこかノスタルジックな物語をどうぞ。
隣に越してきた子に、ある日そう告げられたことは、既存の世界観を大きく揺るがしてゆく……。
両親からの待遇に納得ができず、居場所を見いだせなくなっていた主人公の少年は、「自分は妖精の子」だと主張する隣の子の影響を受け、少しずつ「現実とは異なる夢の世界」を思い描くようになる。
しかし少年は分かってはいなかった。妖精の存在を信じることの、本当の意味を。
現実逃避の過程で偶然会った隣の子に告げられた、少年の「失格」。隣の子は「妖精」となり、この世から消え去る。現世に残された少年がその真実に気付き、甘んじてそれを受け入れ始めた時、隣の子は再び少年の前に現れ……。
コドモはなぜ、夢を見るのか。
なぜオトナとコドモは、違う世界観の中で生きるのか。
オトナって、コドモって、何なのか。
読後に思わず考えさせられる、深くて、どこかノスタルジックな物語をどうぞ。
イチオシレビューを書く場合はログインしてください。