イチオシレビュー一覧

ファンタジーによくある魔王城、そこの労働環境について描かれた物語だ。

魔王軍などの労働形態は、大概強いものについていくみたいな脳筋主義で描かれているのが常だが、この作品はびみょうに人間味のある雰囲気があり、そこのアンマッチさが面白い。

ワイト氏は下級アンデットなのだが、彼の見事なまでの社畜っぷりを見ていると、段々ただのサラリーマンにしか見えないのが笑えてくる。

ワイト氏の奮闘劇を是非みんなにも見てもらいたい。

　短編ならではの切れ味という物がある。

　一話完結という前提だからこそ、作者はそこにありったけの発想を注ぎ込む。長期連載が重厚な趣のある大河ドラマとすれば、短編は特番だ。スペシャリティを追求した独特の味がある。

　この小説のエッセンスは何か。それはファンタジーにおけるブラック企業、即ち魔王軍と、そこで社畜として働かされるワイト氏の戦いの物語だ。

　下級アンデッド故、ワイト氏は馬鹿にされ、ひたすら昼夜問わず働かされる。地味な書類仕事と格闘しても、誰にも評価されないまま――だが、彼にも意地があった。

　刮目して読んでほしい、社畜の意地を。

　そして拍手で祝ってほしい、下級アンデッドの男っぷりを。

　約7,000文字に詰め込んだ怒濤のストーリーは、仕事で疲れたあなたの明日への応援歌だ。