イチオシレビュー一覧

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自分が「男の子」であったことを思い出させてくれる作品

  • 投稿者: 退会済み   [2017年 05月 03日 10時 25分]
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「恐竜は歯磨きするのかな?」

幼い頃、そんな疑問を抱いたことがあります。もうずいぶん昔、恐竜ブームがあった頃です。

恐竜がよみがえった現代日本というパラレルな世界を舞台とする本作は、私の幼い頃の疑問に形を与えてくれたような作品に思えます。メインにすえられたヒロインは、恐竜を手懐ける幼女、通称『歯磨き係』。名前のとおり、彼女のお仕事は恐竜の歯を磨くこと。巨大な恐竜がおとなしく幼女に歯を磨かれている光景は、なかなかに微笑ましい絵面です。

恐竜だけでなく、本作は男の子が好きなものをこれでもかと盛り込んでいます。かつて郵便局が採用していたかっこいいバイク、恐竜を退治するための銃、魅力的な(おっぱいの)お姉さん、主人公たちの背後でうごめく組織の力学、その中心にいると思しき『歯磨き係』――。今後も目が離せません。

ロマンと子供心と恐竜と

  • 投稿者: big bear   [2016年 10月 28日 13時 46分]
私の勝手な偏見ではあるが、子供の頃恐竜図鑑を読んで心を躍らせなかった男の子はいないはずだ。古代を生きた体長十数メートルの爬虫類は子供の夢であり、男のロマン。今も昔も、彼らは我々をワクワクさせてくれる。
この作品には、そんなロマンが詰まっている。ロストワールド、失われた原始の憧れがこの作品には息づいているのだ。
だがしかして、この作品はそのロマンを決して夢物語で終わらせてはいない。確かな知識と彫像のようなしっかりとした文体で作品の屋台骨を支えているのだ。
少しずつ明かされていく世界観と恐竜出現の謎、絡み合う組織の思惑。魅力的な登場人物たちと豊富なアクション。これら全てを巧妙に配置しながらも、決して雑多ではない。この作品の全てが見るものの心を躍らせるロマンの塊なのだ。
もしあなたが、一度でも図鑑の恐竜たちに想いを馳せたならきっとこの作品の中にかつての自分を見るはずだ。

「これこそセンスオブワンダー! かつて地球で栄華を誇った恐竜が21世紀に出現。彼らと対等に接する『はみがきがかり』の正体は?」

 童話めいたタイトルに惹かれて読んでみると、海外のハードボイルド小説を翻訳したようなスタイリッシュな文体、凝ったルビの振り方に心躍る。

 世界観は隕石衝突後、変貌を遂げた生態系。
 過去の地球にしかいなかった恐竜が復活。ただし肉食竜とは別の進化を遂げた二足歩行の存在も。

 主人公の名は体を……表さない、女性の扱いは不得手でも勤勉実直な少年小山内。
 彼が思慕する物静かな女性伊香靜音。腹に一物持っていそうな体臭も態度もきつい上司佐藤。
 人当たりがよく恐竜マニアの三宅惹子。
 彼女が小山内に指摘する草食恐竜、ブロントサウルスの正体とは? そしてその存在が示す事実とは。

 多くの映画作品で猛威を奮ってきたティラノサウルス。
 それに親密に語りかける少女「はみがきがかり」とは。
 謎を孕んだまま物語は加速していく。

 恐竜を殲滅させるのではなく、駆除に徹する『配達係』の活躍にこうご期待!

言葉とはかくも楽しいものだった

  • 投稿者: 南乃素材   [2016年 06月 30日 12時 50分]
物語云々は言わずもがな、楽しくて仕方ないものでして。
子供の頃に興味を持った恐竜たちが、ジュラシックパークよろしく現世に蘇り、主人公である郵便局員が無骨にそれらと戦う訳なのですが、特筆すべきはその物語を紡ぐ作者の言葉でありまして。
ガツガツと機関銃のごとく書き出された言葉たちが随所随所でスクロールする指を止め、目を楽しませてくれて、更に指をすわすわと先に進めてくれる魔力があります。
ウィットに富んだ言葉やら洒落っ気満載の言葉の大盤振る舞いをぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。
きぅとにふふと胸が高鳴るに違いないですよ!

恐竜を 知らない人でも 楽しめる

  • 投稿者: 犬井作   [2016年 06月 29日 13時 51分]
SFアクションと聞いて、「スターシップ トゥルーパーズ」や「宇宙戦争」みたいな巨大生物との争いを想像したそこのあなた。
是非ともこの小説を読んでください。

「ジュラシックパーク」で語られた人間の傲慢のその先の世界、度々街に現れる恐竜に対処するのは「配達員」だ。通常業務の傍ら、彼らは恐竜たちと対峙する。
配達員の日常はハードだけれど、オペレーターや同僚には美人もいる。もちろん口臭がひどい上司付き。普段はヴェロキラプトルみたいな相手が多いが、ティラノサウルスまで出てきちゃう!
そんなある日、パート配達員小山内(おさない)は、不思議な幼女と巡り合う。彼女は己を、「歯磨き係」と呼称した。

ハードボイルドな文体で描かれる痛快アクション。恐竜に対する深い造詣に根ざした迫力満点の恐竜描写。
一度読んでしまえば病みつきになるだろう。
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