イチオシレビュー一覧

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モンスターも魔法もない、中世ヨーロッパ風な世界でもないファンタジーをお探しのあなたへ。

気がついた時には一日を終えた眠気は無かった。私はいつしか物語を食い入るように見ていた。


よし布教しよう。
そう思い立ってからは早かった。

この小説には『文化』がある。
太陽光は常に陰り、一面泥が広がる環境下で生き抜くために磨き抜かれた文化、習慣、価値観がある。だからこそ生まれるこの世界の住人の葛藤が、私は新鮮でたまらないのだ。

人々の髪や肌は赤黒く、風景も泥の色しかない。そこに産まれた、肌が白く金の髪に紫の目をした子供。この手の話はその異色の子供にばかり視点が行きがちだがそうじゃない。
色の無い人々にこそ、鮮やかな色がある。そんな世界を是非楽しんでみて欲しい。

ただ読んでこの世界を感じて欲しい

  • 投稿者: 三叉霧流   [2016年 07月 31日 07時 05分]
プロローグを読むだけでため息をついた作品を私はあまり記憶していない。
泥、という言葉で始まるこの物語は、その何処までも広がる厳しい自然の泥の原野とその中で生きいている人間の対比が見事に人間の無力感を感じさせる。しかし、それが同時に圧倒的な躍動感を生み出し、読むだけで壮大な映画を見ている感覚に襲われる。
なるほど、登場人物達はこの泥の原野で息づき、戦っているのだと思った。自然や運命に立ち向かう主人公達を私はもっと見たい。もっと一緒に駆け回りたいと。

是非、まだ読んだことのない方は、圧倒的な世界に踏み込んで、主人公達と一緒に泥の原野を共に走って欲しい。
きっと作者は私達を泥の原野の果てまで連れて去って、見たことのない泥の世界で、輝く何かを教えてくれる。
それを私は必死に追いかけたいと心から思う。
更新が楽しみだ。

泥にまみれた世界と人の物語。

  • 投稿者: 陸 理明   [2016年 07月 12日 02時 30分]
非常に骨太の異世界もの。
淡々と語られる物語は、すでにあらすじに示された通りの厳しい未来への予感を感じさせてとても息苦しい。
ただし、そこには息づき始めた登場人物たちの呼吸が感じられ、これから先をいかに作者が書ききっていくかを期待させるものがある。
作者は別の作品で少年少女たちの悲鳴にも似た呼吸を描いてきた経験もあり、この長く果ての見えない物語をどのようにまとめきるのか、とても興味深い。

泥と泥の世界に輝く一筋の光を主人公たちが掴み取れるのか、それはまだわからないけれども。
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