イチオシレビュー一覧

　かなり前の話になるが、結婚する友人にお祝いは何がいい？と聞いたおり、彼女はこう言った。
「私たち、夫婦茶碗とか湯飲みのたぐいは買わないようにしてるの。どちらが先に割れてもいやだから」
　なるほど、やはりそういうものなのだろう。
　当人同士にとって、夫婦茶碗とは、普通の単なる茶碗でなく、互いの存在そのものなのである。

　この作品の主人公、幸子は夫婦茶碗の自分の分をあやまって割ってしまう。嫌な予感は的中。最近、夫の様子がおかしい。何となく浮気をしているようなのだ。
　心中穏やかでない幸子が、親友から貰った妙薬とは、相手が嘘をつけば、ノイズがかかって聞こえるというもの。
　そしてそのとおり、夫の言葉にはノイズが入ってくるのだった。果たして、夫婦の仲は？　幸子の運命は？

『愛妻語録』でお馴染みのkeikato氏の描く夫婦の物語。
夫婦茶碗に込められた愛に、思わずほろりとさせられる。