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別れの時、娘は母の愛を知る

家族というものは、目に見えない絆で結ばれている。それは理屈では説明できない。けれど、心の内で想ったものがすべて相手へ伝わるような、そんな甘い関係でもない。

ただ腹から子を産んだから母になるのではない。その腹から生まれたから母と慕うわけでもない。母と子は、共に生まれ共に育つ。そしてそんな母子の関係だから許せないことも多々存在する。

ここにいるのは一組の母娘。父を亡くした娘と夫を亡くした女の元にやってきたのは、小さな硝子瓶を手にした得体の知れない男だった。小さな娘はその硝子の小瓶を大切にするが……。

女性なら誰しも、この母と娘の関係に自分を重ねてしまうところがあるのではないでしょうか。硝子瓶の中身は空っぽになってしまったけれど、娘は長年の呪縛から解き放たれ、ようやっと新しい出発点に立てたのではないかと思います。結末に思わず涙する、大人のための美しいお伽話です。
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