イチオシレビュー一覧
▽レビューを書くこの世からあの世へと「帰ってきた」魂は一旦「粉々に」されねばならず、バラバラの魂の欠片は、「細胞実験の喩えのように同種同士で集まり再構成され、生き返る」、という話は、プラトンの『パイドン』で語られる魂不死説を思い出させる。後者が、何故それぞれの魂が全てのイデアを知っていて、けれども再生する際にはそれらを忘れてしまうのか、といったことの説明が神話という形でしかなされなかったのに対し、前者はそれに物理学的な説明を与えている、という点が面白い。ハイデッガーの時間的存在についての話も出てきており、それが小説内の、パラドクシカルな世界を暗喩しており、小説の最初と最後に登場する、「白き蓮の花のよう」な女性という一致はしかし、時間の不可逆性への反抗、あるいはトポロジー的試みと解することもできる。さらには神についての問答も出てきたりと、読み手を刺激する要素が多分に含まれている。非常に有意義な小説だ。
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