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この時よ永遠なれ

  • 投稿者: 敬愛   [2019年 01月 07日 21時 42分]
 夢にまで見る程美しい作品に出会ってしまったなと言うのが正直な気持ち。
 圧倒的なスケールで描かれるミュージカルのような、また未だ誰も到達した事の無い異世界物のような。不思議な感覚がしてならない。嬉しい、悲しい、愛しい、憎いとかそんな言葉で語れる作品でもない。
 超切なさ強め。魂の発露や神すら凌駕するような禁断の世界。この小説は全てが生と死の悟りの聖書のようだ。筆致の美しさは一字一句貪らずにはいられない。美麗なイラストが更に華を添える。全ての魂は光る為にある、それを教えてくれたこの作品の読者になれた事を本当に素敵な出会いだと思う。最強のラブファンタジーだ。
 どうか終わらないで欲しいという願いが届きますようにと祈る。永遠が無いなんてこの小説の輪廻のカルマの前ではお笑い草。商業小説でもおかしくない作品を無料で読める事を私は心から喜んでいる。このまま物語が続くならばこの言葉を言える。幸せと。

これは、時空と性別をこえた愛の物語

 秋瀬夏南汰は大正生まれの破天荒な少年。
 親友である春日雪之丞との間にいつしか恋心が芽生えます。
 しかし時代は、家族は二人の仲を認めなかった。

 時は移り変わり、学生の秋瀬ナツメは教授の磐座冬樹と道ならぬ恋に落ちた。
 しかし冬樹はあることがきっかけで先立ってしまう。
 ナツメは愛する人ともう一度めぐり合うために、大きな決断をする。


 一見無関係に思える恋は実は深い繋がりがあって……

 夏南汰と雪之丞だけではない。
 ひとは何度生まれ変わってもめぐり合い、惹かれ合う。

 果たして時と性別をこえた恋は成就するのか。

 あなたも作者七瀬さんが自ら手掛けた幻想的な挿絵とともに、真夏の雪の奥深い世界を旅してみませんか。

あわいを歩むように、過ぎ行く時間。

読み進めれば進めるほどに、現実というものの不確かさが鮮やかになる。しかしどこまでも謎めいたもうひとつの世界が、不確かゆえの刹那を語る。
作中に描かれるフィジカルとアストラル。折り合わぬようで隣り合わせのふたつの世界は、紐解かれてゆくでもなく、ただその相互性を手渡してくれた。
すれ違う魂たちが辿る行き先、その終着点はまだ見えないが、幾度も幾度も呼び合うソウルは何かを手繰り寄せるように、既に各々の終わりを語る準備をしているかのようだ。そして、それはきっと、はじまりでもあるのだろう。
もしこんなことがあったなら--この作品は、読者に今一度足元を見直すよう促しているようにも思えて。
ただ固唾を飲んで彼らを見守りたいと、願ってしまうのだ--わけもなく、魅入るように。
この世界、今に生まれた奇跡を思わずにはいられなくなるような一作に、感嘆の息を吐いた。
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