イチオシレビュー一覧

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見事な文学です。

  • 投稿者: 退会済み   [2016年 12月 26日 19時 43分]
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この作品は、虚構の物語に共感出来ない主人公の、或いは小説や映画に感動出来ないアンチフィクション主義者の心の機微を丁寧に描いています。

小説を書くとはオハナシを作る事ではない。小説とは虚々実々に描かれた人間の物語。小説を読むとは、物語を通して、そこに込められた【想い】に気づき、汲み取る事。
人は、とても精神性の高い生き物で、感受性が豊かです。
小説や映画や歌に感動し、涙を流します。時には、その感動が生きる支えになる事さえあるのです。

この作品は、フィクションである小説の効能を声高に押し付けるのではなく、敢えて抑制を効かせた表現で伝えています。物語の中で、先生が主人公の為に本を贈るという。ここで、どんな本を薦めるか書きたくなるところです。しかし、それは敢えて書かない。この作品は、地味な筋立てでありながら小説の役割を示唆しています。お薦めです。
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