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流麗な文章で綴られるサーガ序章

  • 投稿者: 有月 晃   [2018年 02月 04日 12時 02分]
処刑を待つ罪人が、最後の夜を過ごすという隔絶された空間。

誰も訪れるはずのないその場所で交わされる、有り得ないはずの二人の対話。冒頭では君主と臣下であった二人の関係、その変遷が過不足のない、流麗な文章で綴られています。


文字数を云々するのは無粋とはいえ、僅か三千弱というボリュームで見事に読者を引き込み、眼前に情景を展開し、惜しげもなく手仕舞いする鮮やかな筆力には賞賛の念を抱かずにはいられません。

そして、ファンタジー掌編のお手本の様な佇まいでありながら、これはあくまで序章に過ぎず、本編への期待が自ずと高まるという心憎い演出。


割かれた文字数は控えめながらも、冒頭と結びにおける「黒髪」の描写の対比、「翡翠のような瞳」に著者の強いこだわりが感じられて、ご馳走でした。


この掌編が纏う本格・正統派の世界観に魅せられたなら、本編に進まない手はないでしょう。

主従萌えゴコロをくすぐる、珠玉の掌編。

硬質な文体で紡がれる、静かなひと夜の物語。
巧みな描写に、冒頭から引き込まれる。
精緻な無駄のない筆致で次第に明らかになるのは、この二人の歴史と関係。
そこがまた、甘くてせつない。

翡翠と龍は、そう、主従関係なのです……!
主従萌えの徒にはたまらないシチュエーション。垂涎ものとはこのことです。
ふたりのロマンティックな恋愛は、やがて歴史となって世界を動かす。

短編でありながら、背後に広がる深い世界観を内包する、珠玉の掌編。
ぜひぜひ、一度お読みください!
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