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ついつい抱きしめて上げたくなる主人公

  • 投稿者: 退会済み   [2017年 04月 27日 16時 09分]
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まったく私事ながら私は公僕である。国民の血税で食べている以上は事に望んでは危険を顧みず、国民の負託にこたえなければならない。
しかしこの作品はそんな私を学生時代の自分に戻してしまう。この作品は銃後の女性の物語である。軍人とは基本的に奉職した時から『我が身わが物と思わず』を徹底させられる。しかしそうしたマシン然とした人間に国民が守れるのかと聞かれれば私は違うと思う。
この作品に出てくる『私』のように帰りを待つ守りたい人達がいるからこそどの国の軍人たちも任務に励むことができる。樹木や花によって表現される月日の移り変わりと、それによる心情描写はまさに脱帽の一言だ。
そういう意味においてこの作品は『銃後の人』という者を描き切った甘く切ないヒューマンドラマとして非常に完成された域にあるように感じる。
あなたもそんな人間ドラマを味わってみては如何だろうか?

大切なものを守ると戦いに出かけたあなたの帰りを、私はずっと待っている

争いごとは何も生まない、不毛な力のぶつけ合い。それは誰もが知るところではありますが、大切な人を守るためにと戦地に出かけた人を誰が責められるでしょう。彼らを見送るしかなかった人たちは、きっとただかの人の無事を願い、帰りを待ち続けていたはずです。

この物語の主人公は、どこかぼんやりとしたところのある穏やかな女性。彼女の静かに繰り返される日常は、とある白い服を着た人との出会いにより彩りを添えられてゆきます。しかし、あることをきっかけに否応無しに大きな時代の流れへと二人は飲み込まれてしまうのです……。

淡々とした語り口ながら、多くのことを考えさせられます。甘く切ないノスタルジックなラブストーリーではありますが、それだけを味わって終わらせるのはもったいないのです。こちらの作品のジャンルが恋愛でないという点も、この作品の背景を考える一端にきっとなることでしょう。
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