イチオシレビュー一覧

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全てが真っ白いキャンバス

※ネタバレあります。

――私は彼のことが好きだ。
同様に彼も私のことを好きでいてくれる――

冒頭の二行。
胸を張って声高に言える人はいますか?
彼女は確かに言いました。

――恋愛経験の少なさを恨んだ――

途中の一小節。
目の前の相手よりも劣ると認めてしまった事実。

そう。真っ白く純粋なんです。
混ざり気のないピュアな心。

疑いもなかった真っ白い日常に落とされた一滴の墨汁。
徐々に滲みながら周りを侵食していく様は、少しづつ読者に痼を与えていきます。

真っ黒に染め上がる前に、残った白が彼女の顔を綻ばせました。

――情もあるし――

最後の会話の一言。
恋愛において最も卑怯な言葉を言い放つ男。

読了後、この女性が今後どのような恋愛観を持つようになるのかうっすらと分かるような気がする筈です。

しかし、全体的にほんわかと白いイメージで読めると思います。
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