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[良い点]
残酷描写や怪談的な要素に頼らず、人間の負の部分にスポットを当てたホラー。人間の恐ろしさが緻密に描かれていて、また違う怖さがありました。

[一言]
初めまして、いきなりの感想失礼します。
実は自分もホラー系統の小説を書いていまして、参考になる作品は無いかな……と彷徨っていた所貴作に出会い、拝読いたしました。
こういう描き方もあったのか……と学ばせていただき、有意義な時間になったと思います。
ありがとう御座いました。

虹色冒険者様

ご高覧頂き、ありがとうございます。
私にとって一番怖いのは、お化けでもスプラッタでもなく、目には見えない人間の心のようです。読むぶんにはどれも楽しめるのですが、書くとなるとつい人間のえぐい部分を書きたくなるのはどうしてでしょうね。

虹色冒険者様もホラーをお書きになるのですね。今ちょうど『鬼哭啾啾』を読み始めたところです。これからどんな展開になるのかとても楽しみです。

そしてブクマ等を拝見したのですか、橘塔子様の作品がお気に入りに登録されているのを知り、とてもうれしくなりました!
橘様の作品は、ファンタジーもホラーもどれも秀逸ですよね!
あんな作品をいつか書いてみたいなあと思いつつ、新作を読むたびに圧倒されるばかりです。

ご感想、ありがとうございました!
[一言]
前評判どおりドロドロもドロドロな……初っ端からやってきたネグレクトで一気に鬱ってきました_(┐「ε:)_

うらのハイツより黒さがパワーアップしてるよ石川さん!
ペットの話題で和気あいあいする看護師2人はぶっ飛び過ぎてたから笑えたんですけど、他の話題は普通に転がってるレベルのものだから、リアリティがありすぎて逆に鬱い。

世の中汚いものだってわかってるからあえて見ないようにしてるのに、逃げ場のない文字にされると精神にダイレクトダメージがww

はぁ。でもあれですよね。
この遊園地に来ちゃった子供達、この辛い時期を乗り越えられれば誰よりも優しくなれる可能性も持ってるんですよね。
個人的意見として、人に本当に優しくできる人って、辛い時に優しくされたことのありがたさとかを知ってる人だと思うんです。
優しくされてるだけじゃ優しさを学べないって不便な世の中ですねぇ。
  • 投稿者: 夕立
  • 2017年 12月30日 13時16分
夕立様

ご高覧頂きありがとうございます。
鬱いと評判のホラーへようこそ。今回の作品は、読後感の悪さから、イヤミスっぽいという感想も頂きました。

ホラーって年に一度しか書かないんですけれど、どうもその一度にどろどろしたものがこもってしまっているようです。

やはり書き手にとって、お化けより何より、心の中で何を考えているかわからない人間が一番怖いというのがあるのだと思います。もしかしたら、隣の家ではこんなことが起きているかもしれない。目の前で笑っている友達は、心の中で泣いているのかもしれない。そんな恐さは常にあります。

学生時代に心理屋さんを目指していたことがあったからかもしれません。(結局途中で挫折しましたが。相手の感情に自分が引っ張られて、こちらの心が折れそうでした。臨床心理士になった友人はすごい)

途中途中で挟まる遊園地の風景と、観覧車のエピソードは私にとって救いのつもりです。本当は知らずにいたほうが幸せなのかもしれない痛みですが、深く傷ついたことのある人が立ち上がったとき、彼らが持つ力というのは何物にも勝るのだと思います。優しさも強さも、きっと。

虐待や犯罪などで傷つき、辛い思いをするかたが少しでも減り、心安らかに過ごせますように。
[一言]
はじめまして。まだ二話目までなのですが、感想をお伝えしたく。

方向性の違う怖さだなぁと読んでいて思いました。ホラーというと、幽霊的な怖さをすぐに思い浮かべてしまいますが、人の心の怖さがじわりと寄せてくる感じ。

以降の話も楽しみです。
紫藤サキ様

はじめまして。ご高覧頂き、ありがとうございます。
読むのはサイコホラーも、心霊も、スプラッタも楽しめるのですが、書くとなるとついつい人間系になってしまうようです。一番怖いのは人間なのだとどこかで思っているのかもしれません。

みんな一生懸命に前を向いて生きております。私たちの隣で笑っている子どもたちや、にこやかな女性たちも、心のなかではもがいているのかもしれません。

夢の世界と現実の世界を交互に挟みながら、物語が進んで行きます。紫藤様の心に怖いだけではない読後感を残せたら幸いです。
[一言]
現実の裏側では、こんな遊園地が営業しているのかもしれない。
悪夢の遊園地ツアーは、どんどん加速して濃くなっていったけれど、出口まで辿り着けたようです。
今はまだ。でも多分きっと。
不気味な余韻を残しつつ、明るい陽の下の救いのない現実に戻る……。
楽しく味わわせていただきました‼︎
井川林檎様

ご高覧頂きありがとうございます。
遊園地ってきらびやかな反面、どこか不気味さもあるような気がします。
前に住んでいた家の近くに古びた小さな遊園地があったのですが、誰も乗っていない観覧車のゴンドラが揺れているのは見ていてぞっとするものがありました。あるべき姿ではない、寂れた遊園地。本当なら賑やかなはずの人影も見えず、歓声も聞こえない。それゆえに何か違和感を感じてしまうのかもしれませんね。
現実と夢の世界をつなげつつ、もしかしたらあるのかもしれないと怖さを感じて頂けたなら、幸いです。本当にありがとうございました。
[一言]
完結お疲れ様でした。
短い期間で仕上げたとは思えないほど、質量ともに充実のオムニバスでした。しかも公式テーマのアトラクションをすべて網羅した豪華仕様! ぐいぐいと物語を進める推進力、細かな細工を刻む繊細さ、両方の面で魅せられました。

独立した短編集かと思いきや、相互に繋がりを持たせた構成が凝っていましたね。ヒロインたちの名前がシリトリになっていると知り、なるほどと膝を打ちました。お互いの問題に干渉しない彼女の人生が、一瞬交錯する――その様は、遊園地ですれ違う来園者たちのようです。どの女性も他人に頼ることなく、自力で問題を解決する姿が逞しく思えました(破滅的な解決法もありましたが……)。

徹底的な女性目線で描かれているため、同性としては共感する部分、また深く刺さるモチーフがたくさん散りばめられていました。同僚に利用されるお人好し、人知れず節制する美人(たくさん食べる子が好きとかふざけんなという意見、分かりすぎて辛い……笑)、母親との関係に悩む娘……昨年の夏ホラーを読んだ時もそうだったのですが、石川様の現代ものは心理描写が赤裸々で圧倒されるほどリアルです。ここまで踏み込むと痛いというところまで掘り下げられて、否応なく惹き込まれます。だからこそ、鬱エンドだと相当にキツイ(笑)。
その意味で「ミラーハウス」の美佳に「観覧車」の後日譚があったのは救いでした。美佳の立場に立てば、憎い暴君である母親を苛め殺した方が爽快だったのかもしれませんが、自分に繋げられた呪いの正体を知ることは、その呪いから解放されるために必要だったと思うのです。母親を許すのは無理でも理解できるのなら、あるいは理解しようと努力できるのなら、もう彼女は連鎖する呪いから逃れられているのではないでしょうか。追い詰められた彼女の魂を救った桃色のキャンディは、逃避できるファンタジーの象徴でしょうか。どんなに辛い時でも、ひととき気持ちを逃がす場所があれば救われる気がします。

シビアな大人パートと対照的な子供パートも素敵でした。いつウサギが凶暴になるかハラハラしたのですが(笑)、最後まで優しい夢の世界でした。ここもまた逃げ場のない子供たちの最後の避難所だったのでしょうか。現実の人生に戻ることを選んだ少女と、放棄した少年。惨い事件で命を散らせた子供の魂が、せめて夢の遊園地で楽しく遊んでいることを祈りたくなりました。
  • 投稿者: 橘 塔子
  • 女性
  • 2017年 08月02日 22時59分
橘塔子様

ご高覧いただき、ありがとうございます。
このホラー企画がないとホラージャンルを書かない私にとって、夏は挑戦の季節です。ホラーを書くに当たって何を軸に書いていくのかが昨年同様悩みどころでありました。もともと今年こそはほんのりどこか不思議なメルヘンな世界を描く予定だったのですが、なぜか昨年同様に荒々しい大人パートが殴り込みをかけることになってしまいました。ホラーは書いていて、引っ張られるような気持ちがします。キャラクターの気持ちを知るために淵を覗き込むと、向こう側から引きずり込まれそうな、そんな雰囲気です。コンスタントにホラーを書き上げる方は本当にすごいと実感いたしました。

実は男性目線での話も検討していたのですが、心理描写がまったくうまく書けずに断念したという経緯があります。そこが例のジェットコースターの部分でして、急遽代役として由紀が登場することになりました。結果的に追い討ちをかけることに。ああ修行不足です。

実は去年、今年とホラーを書いてみて初めて、どうやら自分の書くホラーというのはどろりとしたタッチのものが多いと気がついた次第です。書いている間は必死すぎてあまりなりふり構っていられないため、書き上がってからの反省になってしまったのですが、どのジャンルも書いてみないとわからないことがあるのだなあと思います。読むぶんには、幽霊も妖怪も怖いのですけれど、自分が書く際にはやっぱり人間が一番怖いです。「イヤミス」と呼ばれるジャンルが好きなのもそのせいかもしれません。

今回の夏ホラーで一番悩みどころだった観覧車のシーン、これを救いだと受け取ってくださって本当に嬉しいです。ままならない現実だからこそ作品の中ではきっちり彼らの心を救いたいと思って書き始めた作品なのですが、結局のところ、同じことを相手にやり返すだけでは自分の心は救われないんですよね。虐待を受けた場合に、まず自分で自分を愛そうと言われてもいきなりできるわけではなく、心の傷を癒すには時間や自分が納得できるだけの理由がどうしても必要になってくると思うのです。「なぜこんな目に遭わなければならなかったのか」という美佳の問いを考え続けると、「ミラーハウス」で終わらずに「観覧車」でお互いの関係を見つめ直し、距離を置きなおすことができればきっと今までとは違う明日が見えてくるのではないかと思い、あのような形になりました。

うさぎはありがたいことに最後まで優しいうさぎでした(笑)厳しい現実のことを考えると、夢の世界くらい味方が欲しかったというのもあります。うさぎの着ぐるみの中身は、未だにみんな小さな子どもたちのままなのです。この遊園地で働き続けて、また生まれ直したいと思えれば退職することもできるのだけれど、着ぐるみが古びてしまうくらい長い時間ここにとどまる子どもたちもいます。子どもたちがまた再び生まれたいと願えるような優しい世界になってほしいと心から願っています。

本当にありがとうございます。
[良い点]
これは……すごい作品ですね。

まるでドラマを観ている感覚でした。
構成力にしろ心理描写にしろ、これほどの作品ってなかなか出会えないので、ホラーなんだけど、読後になんかめっちゃ感動している自分がいてる。

素敵な作品をありがとうございました。


抹茶小豆様

ご高覧いただきありがとうございます。
人間系のホラーであり、構成・内容ともに好き嫌いがはっきりとわかれる作品ですので、こうやって面白かったと言っていただけて本当に嬉しいです。

可愛らしい夜の遊園地のメルヘンさと、残酷な大人の復讐譚と落差が描けていればこんなに嬉しいことはありません。ドラマを見ているようとおっしゃっていただけるのは書き手として最高の褒め言葉です。

こちらこそ素敵な感想を本当にありがとうございます。大変励みになりました。
[良い点]
シチュエーション以上に登場人物の設定が怖い。
それを生々しく描き切ってしまう石川サンが一番……恐ろしい子!(笑)
[気になる点]
「物語」としての完成度は高いと思いましたが、ホラー作品として見ると……
自分の考える「ホラー」とはちょっと違う気がしました。嗜好の問題かなぁと思います。
[一言]
ホラーとして見るなら「1.ミラーハウス」ですでに完成しているのでは……と思いながら続きを読んでしまいました(笑)。
描きたかったテーマがそれ以降にあるという事も伝わりましたし、エピソード2以降のお話が拙かった訳でもありませんでしたが、同じような展開が繰り返される為「予定調和」「安心感」が先に立ってしまって……恐怖心が薄れてしまった感があります。
  • 投稿者: LED
  • 2017年 07月30日 08時42分
LED様

ご高覧いただき、ありがとうございます。
こうやって丁寧に感想をくださり、とてもありがたいです。

女性目線で物語を作っているため、男性的に「気持ち悪い」部分も多かったと思います。登場人物がゲスな男ばかりというのは、作者が女性だからというのもおおいに関係があるかと思います。実は途中で男性目線の話も入れようと試みたのですが、うまく感情を書くことができませんでした。どろりとした感情を書くにあたって、修行不足でした。

「ミラーハウス」ですでに完成していたのではというご指摘に、とてもびっくりしました。そうか、これを短編として提出するという方向性もあったのか。実は「ドリームキャッスル」が最初に浮かんだ物語だったので、様式美として同じような結末になるように揃えてみたのです。それが逆に冗長になってしまったのですね。書いていると、書くことに一生懸命で、正直、この話が面白いのか、つまらないのかわからなくなります。こうやって忌憚ない意見をいただけることはとてもありがたいことです。

本当にありがとうございます。
[良い点]
怖えよ。

さて……

怖えよ!

ウサギの見せる夢が、現実とリンクしてるのはもう疑いようがないとして、単に復讐の舞台装置で終わらせないのが石川さんの腕前のすごいとこだよなあ。

もしかして、複数のアトラクションを出すために、複数の登場人物を出したんですか?
だとしたら、すごい手間だ。

それも、女ばっかり……

唯一の例外が少年ですよね。
別に何かしたり何かされたりってわけではないけど、彼だけが無垢なまま終わった。

  実在するんでしょうな?
  死んでんじゃあるまいね?

うーん、ピエロだよね。
謎は。


支配者とは思えないし、ピエロもかつては来場者だったのかな。
「ここにいたい」
っつったら、ピエロにされたとか?

  誰によ……?

[一言]
俺んとこの犬をしつけるって、莉奈のことだったの!?

いや……著作権フリーだから使ってよ。
女の子のほうも使っていいっスよ?
  • 投稿者: 古川アモロ
  • 30歳~39歳 男性
  • 2017年 07月29日 19時05分
古川アモロ様

ご高覧いただき、ありがとうございます。
もともと夏ホラーとして脳内にあったのは、この中の「ドリームキャッスル」と「メリーゴーラウンド」のみでした。少し色ものでしたし、何かストーリーに統一感をもたせたいなあという発想から苦肉の策としてオムニバス方式を選択した次第です。個人的にはメルヘンな少女のパートが気に入っております。

女性視点なのは、書き手としてそれが書きやすかったためですね。本当は男性視点も入れたかったのですけれど、つい。それからオムニバス方式をとるにあたって、登場人物の名前を先に決めたのですが、美佳、佳衣、絵里、莉奈としりとりにしたのです。その際に男性名がまったく浮かばなかったという発想の貧困さもあります。しかも本当は由紀ではなく、奈緒という登場人物になる予定がストーリーの都合上、急遽変更されるというドタバタもありました。

あの少女が訪れている遊園地は、虐待されている子どもたちが訪れることができる夢の世界です。出口から外に戻れば現実世界に戻りますし、うさぎとして働くことを選べばあの世界に留まることができますが、現実世界では死を意味します。「またのご来園をお待ちしております」でうさぎにかわった少年は、えくぼのある二重の少年です。「観覧車」で美佳に飴をくれた少年もまたえくぼのある二重の少年です。美佳自身がニュースに出ていた少年によく似ているとコメントしている通り、少年はネグレクトによって亡くなった被虐待児です。

夜の遊園地は子どもたちの楽園であり、大人は入ることはできません。その中で現れるピエロは、素顔の見えないいびつな存在です。虐待していることを周囲に隠している両親の象徴として書いております。ピエロに捕まると、強制的に元の世界に戻されます。(眠っているのに叩き起こされることになります。)

少年が両親なのかと問いかけていますが、被虐待児は児童養護施設などに引き取られても両親のもとに帰りたがることが多いです。本当の優しい両親がいつか迎えにきてくれるという思いを持つお子さんも多いようですが、同時に一緒に住んでいる両親がいつか自分に優しくしてくれることを待っている子どもたちも多いそうです。心を隠し、顔を派手なメイクで覆い隠して嘘をついているように見えるピエロは、私にとってちょっと怖い存在なのでこういう役回りになりました。

それでは女の子とワンコは、次回の活動報告でありがたく使っちゃいますね!
莉奈に絡まれる二人です。(危ないことはしませんから! ご安心を!)
[良い点]
素晴らしかったです。全てが繋がるオムニバス形式。
「ねえ、知ってる?」で始まる夢の国。ふわふわと楽しい遊園地と現実がリンクして、なんとも言えない不思議な世界でした。

「観覧車」での切ない母子関係。同じような思いをした方が言っていたことを思い出しました。

「あの鬼のような母、絶対に許すものかと思っていた母。子供にかえってしまった母の車椅子を押したとき、涙が止まらなかった。母のために涙を流す日が来るなど考えたこともなかった」と。
結局その方は最後まで看取ったそうです。安らかな死に顔を目にしたとき、何もかも許してしまったと言っていました。

虐待の連鎖が断ち切れますように、と切に願います。
[一言]
一人一人の心の闇が柔らかな文章で表現されているのが、かえってゾッとしました。流石です。
  • 投稿者: 遥彼方
  • 女性
  • 2017年 07月28日 23時45分
遥彼方様

ご高覧いただきありがとうございます。
読むのは好きですが、書くのは苦手なドロドロ系ホラーです。年に一回のホラー企画ということで、昨年に引き続き、参加いたしました。

誰しもみんな心の中には人には言わないだけでいろんなものを抱えていると思うのです。
理性とか常識とかで押さえつけられているものが、何かの拍子で溢れ出てきたらこんなことになるのではないだろうかと思いながら書いておりました。

それでも根底にあるのは、傷ついた人たちがどうか心安らかに過ごせるようになってほしいという思いです。傷が癒せるなら、糾弾でも、心の中で八つ裂きでも、あるいは記憶から忘れることであっても良いのではないかと考えております。

親子関係は本当に難しい。若かりし学生時代であれば、きっと最初の反撃の部分で執筆が終わっていたと思います。自分が結婚し、同じ親になったこと、そして相手が年老いたことで見方が変わる部分もまたあるのです。

許すことは、愛されなかった自分を認め、受け入れ、自分で愛を降り注いでやる行為に等しいのかもしれません。けれどそれは頭で考えてもできることではなく、誰かに強制されてやるものでもない。こじれた親子の距離の取り方というのは、大変に難しいというのが本音です。

虐待や犯罪が減り、被害者の方の心が少しでも癒えるように祈ってやみません。
[一言]
 拝読しました。
 うさぎのおまじないを軸に据えた一話完結短編と思いきや、その後も話が繋がっていく。短編としても長編としても堪能できる素敵な物語でありました。
 ドリームランドという舞台に、眠りの中という夢の国という設定の妙を加えたのもまた素晴らしい。

 過日コメント欄にて述べた通り、俺としては完全懲悪で因果応報の物語として読んでいたのですけれど、「6.観覧車」はひどく切ない味わいでした。
 子供に返ってしまった母と、その為に母が味わったやるせなさを追体験する事になる語り手。因と果はさながら観覧車のように巡り回り、容易な途中下車を許さない。
 でもそういう重荷を受け止めるべき相手、分かってくれる相手って、ちゃんと他に世界のある大人なんですよね。世界にその人しかいないような子供では決してありえない。
 だからそうなった母親に当たれなくなる彼女は、ちゃんと大人であったのだと思います。あとはそれをどう飲み込むかであるのではないでしょうか。
 人生はさながら夢の国のジュースで、甘くてやわらかなものだけでは絶対に立ち行かない。
 だから消化して昇華してしまうしかないのではないかな、と。どうしようもなく感じるものも希釈できるのが時間だから、今はできなくても、いつかきっと彼女の答えが見つかるようにと祈るのでした。

 読了して最も強い感想は「誰の心にも子供が住んでいるのだな」でした。
 子供は善良で純粋なだけでなく、時に我が儘で我利我利亡者の暴君としての性質を備えていると思います。
 成長するうちに自分だけという気持ちや認められたかったり、愛されたかったりの感情との付き合い方を覚えて、やがて大人になっていく。
 でも年を取っても悪い意味で子供のままの連中が、他の短編たちにも登場するような悪役たちであるのかな、と。

 個人的に好みだったのは、絵里と莉奈のコンビです。
 最初は「あかん! 遊びに行っちゃあかん! 早く逃げて!」とか思ってたのですけれども、「アクアツアー」読了後にはもう安心してました。
 うん大丈夫だこの二人。似た者同士だこの二人。きっと仲良くできるね。

 そして印象深かったのが少年です。
 少女と違って「もう一度頑張ってみよう」とは思えなかった彼。そういうウサギたちがここでは働いていて、頑張る大人たちの中の子供を癒してもいる。
 構図としては「観覧車」と同じく「自分が得られなかった幸せ」を見続ける立場でもあるのだけれど、告げるのは、そして章のタイトルは「またのご来園をお待ちしております。」。
 これらを思うと、なんともいえない心地になります。
鵜狩様

ご高覧いただきありがとうございます。
今年はもう夏ホラーには絶対に間に合わない、諦めようと思っていたのですが、風の噂で夏ホラーに参加すると鵜狩様に読んでいただけるかもしれないという話を耳にして、必死で仕上げました(おい)。良かった、読んでもらえて良かった!!!

苦肉の策のオムニバス形式も、観覧車のラストも好意的に受け止めていただいて、ほっとしております。書きながらずっと、果たしてこれで良いのだろうか、いっそ振り切って復讐譚としてすべて終わらせるべきではないかとも悩んだのです。ただ、人間関係の中でも親子関係は特殊だという思いがぬぐえませんでした。他人と違って縁を切ることもできず、自分の中に流れる血もDNAにさえ繋がりがある。だからこそ毒親に未だ苦しむ人も多いのだと。すべてを否定し拒絶したままでは終われないだろうなあというのが私の考えです。許すことはできなくても、どうにか折り合いをつけて生きていかなくてはいけない。その思いがあの観覧車のシーンであり、夢の国のジュースの作り方です。作者の意図を汲んでいただき、本当にありがとうございます。

絵里と莉奈のコンビ、気に入っていただけて嬉しいです。
作者も書いていて楽しく、ついつい莉奈パートはテンションが上がっておりました。
もともと、莉奈は患者さんの枕の下にうさぎのイラストを忍ばせている時点で愉快犯めいておりますので、飼っているワンコへの愛情も特殊です。身長180センチ、体重60キロなのですが、家飼いなのと行動範囲が制限されていることで、少しずつ痩せちゃうかもしれません。怖っ。

夢の国は、虐待されている子どもたちの避難場所として描いております。
被虐待児は、彼ら自身の頑張りだけではどうしても今の状況から脱することができません。必死でSOSを求めても保護されない場合もありますし、一時的な保護を受けてもまた再び以前と同じ、もしくはさらに悪化した環境に置かれることもあります。その場合、夢の国は避難場所にも、終の住処にもなりうるでしょう。彼らがうさぎの力を借りずに心安らかに過ごせる環境を、大人である私たちが作っていかなくてはならないのですが、今の日本はとても子育てに厳しい環境だと正直思います。子どもたちにとって、周りの大人は信頼できるものという社会が当たり前になることを願ってやみません。
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