感想一覧

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全体的には可もなく不可もなく、無難にまとめてきたなという印象で、取り立てて強い感情も呼び起こされなかった。
作者のXの投稿などと重ねて読むのなら、「ヘタクソと言われても努力して作品を書き続けたい」ということになるのだろうか。

いくつか違和感のある表現や展開があり、いかに列挙する。
「竜をやっつけたい」
→笛を吹くことと竜をやっつける(退治する)ことの間に因果関係がない。あくまで笛は竜を満足させるだけで、無力化するわけでもない。例えば、これが竜を眠らせる笛の音色なら、眠っている間に退治する、ということになるので「やっつける」が成立しなくもないのだが。
この時点で、竜を村から追い返し、洞窟に留めておく状況は既に成立しており、旅人がいる限りは竜の脅威は無力化できていることになっている。
さらに、この「やっつけたい」という感情の起因も不明で、この少年が実質的な主人公なのに、何故竜を憎んでいるのかがふわっとしていて、旅人の発言で「やっつけたい」という気持ちはなくなったことになっている。
この辺りの感情は、「やっつけたいと思っていたが、竜と奇妙な親交を育む」というこの作品の骨子の「溜め」にあたる感情なので、ここに「溜め」がないので、その後の親交に感動が生まれない。

「何故逃がそうとする? お前は斬られた方が嬉しいんじゃないのか?」
→ここは作者に寄り添うのなら、「村の人間は全員に自分を憎んでいるはず」という前提で竜が思っていると解釈するならおかしくはない。その場合、「お前たちは」と書くのが自然だろう。
「お前は」と青年に向かって言っているのだから、青年が個人的に竜を憎んでいることを竜が理解していなければならず、前述したように少年の竜への憎悪をちゃんと描いていないので、やや違和感のある表現になっている。(少年時代に竜に何か罵詈雑言の一つでも吐いているシーンがあれば、竜がそれを覚えていたことがわかるため、ここは良い表現になるのだが)
ここ以外に竜の感情が見えることはないのだが、欲を言えば、もう少し主人公と竜に共通する、何か同じ感情を抱えていてそこが通じ合うみたいなところはあってもいい。

「その斬撃は雷光のように鮮烈で眩ゆいものでした。直後に竜の悲鳴が雷鳴のように轟きました。」
→作者の癖として、戦闘シーンに突然漢語を使って表現する、があるのだが、ここの剣士の斬撃は果たして雷光のように眩い必要があるのだろうか?
おそらく、続く竜の悲鳴と合わせて「雷」系で合わせるという意図なのだろうが、この作品で雷の表現はここにしかなく、この2行だけが浮いている。
この表現をするなら、竜の何かに雷を入れた表現が事前に欲しいなと思ってしまう。
しかも、そのあとの斬撃は「剣士は前に出た竜だけを斬りました。」であり、別にそれなら最初からこの表現じゃなくてもよいのでは、と思ってしまう。
剣士の役割があまりに舞台装置過ぎて、何の感情もなさすぎるにもかかわらず、こういう表現なので、セリフが一つも用意されないけど、衣装はめちゃくちゃ金がかかっている、みたいな頓珍漢な演出に思える。
また、剣士周りで言うなら、少なくとも少年が青年になるまでの間、竜はほぼ青年の笛で無力化されており、その状態で竜を殺してくれ、というのも若干引っかかる部分ではある。

「竜は青年の前に出ました。」
→もうちょっと動いてる感が出せないだろうか。竜は人間のサイズ感とは違うし、二足歩行でもないので、人間をかばうために、飛んで跳ねたり、相手をつき飛ばしたり色々するはずだ。
そもそも、竜がどういう竜なのかをまるで書いていないので、四足歩行かどうかも分からないし、最後の角を渡すシーンも、なんと作中に竜が角が生えていることを明示していないので、最後に初登場である。

全体的には大きな破綻はないのだが、評価が上がりそうな部分を雑な描写で落としている印象。一度書きあがった後に、オチから逆算して、必要な要素を整理して作品を磨く工程が不足していると思う。そうでなければ、竜に角が生えているか最後まで分からん、ということにはならないだろう。
この作品は定期連載ではないので、連載ペースを守りたくて雑になってしまうということもないはずで、多分作者は、書き上げたものを修正するのが苦痛で仕方ないのだと邪推してしまうが、結局のところ、そういった磨きの工程を省いても、百年後に残る作品はできないと思う。
  • 投稿者: 小岩井
  • 30歳~39歳 男性
  • 2026年 04月20日 02時02分
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