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無垢な少女と盗人の青年の、幸福を識るお伽噺

物心つく前から薄暗い地下室に閉じ込められて育った少女・ディー。そんな彼女を、ある時たまたまうっかり見つけてしまったのは、屋敷に忍び込んで来た盗人稼業の青年だった。
監禁された子どもを捨て置けなかったお人よしな泥棒さんによって地下室の外へと連れ出され、まっさらだった少女の世界は、ひとつひとつ色づきだす。

「仕方なく保護しただけの厄介者」だったはずの子どものことで、あれこれ心配してはやきもきする青年と、たどたどしくも生きることを覚えていく子どもの、ちょっとおかしな共同生活。「さみしい」だとか、「うれしい」だとか、そういう感覚自体を生まれてはじめておぼえる女の子が、その「よくわからない変な感じ」をつたなくたぐっていく姿が、いとけなくて胸がつまる。
寄り添い合って見上げる星空の美しさを知った少女はやがて、その感情の呼び名を知る――。

運命に翻弄された少女が幸福の在り処を見つける物語。
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