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懐かしく愛しきサイバーパンク

 ハッカーという言葉が社会に定着した古典的サイバーパンクの時代には様式が定まっていなかったコンピュータスクリプトを作品に取り込んだ小説は少なかった。
 一方でギークという言葉が定着した最近はそれなりにコンピュータが陳腐化したせいか、再びハードウェアに着目されているせいか、人工知能の可能性に目を奪われているせいか、スクリプトという字幕演出にこだわる作品が減っている中、素敵に手頃にテクニカルな空気感のある演出を軸にした、サイバネティクスなボックスマッチの物語。
 なろうの中では探すのも難しいSciFiに軸をおいたサイバーパンク作品。
 シノプシスとして引き抜かれているふしぎの国のアリスもチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンの退屈しのぎの論理学の迷宮だった。
 論理学の奇妙な風景は、SciFiの根源でもある。

 電子と異界知性の言葉の飛び交う迷宮を楽しもう。

不思議の国は未来にあった

人工知能が人類の能力を超えた後の世界。
全てが完璧なる電脳ネットワーク[ダイモン]に支配され、人間も管理された安全な世界。

だけど、必ず管理者の目を逃れる者はいる。
必ず、抑圧するものを跳ね返すやつらはいる。

そういった反政府組織にかつていたリデルは、ある日雨の中で佇む少女アリスに出会う。

それは彼にとって平和な日々をかき回す因子となっていく……。



不思議の国のアリスを彷彿とさせながらも、全く新しいSF(サイエンスフィクション)。
でも、勿論動くのは人間たち。思わず共感し引き込まれること請け合い。

チェシャネコの様に笑うのか、はたまた薬を飲んで巨大化するかの様に驚くのか。
読者の予想をさせない展開は、まさにアリス級。是非ご賞味あれ。
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