イチオシレビュー一覧
▽レビューを書くこの物語の舞台である月面都市が地球と連絡を取っているか否かを知っている者はもうほとんどいない。
生の大型動物たちも記録に残るだけの存在だ。
そして女たちも。
この世界の女性のほとんどは成人を前にして謎のウィルスによって死亡してしまう。
結婚が制度化され、センターが決めた配偶者との間に人工授精で生まれた子供が送られてくる。
肉体を求め合うこともない。
心を通わせる暇もなく子を育てなくばならない。
それでも人はお互いを想い、やがて夫婦となる。
それが一時の夢と消え、『同じ人』を探すことになってしまうこともあるけれど、お互いを思いやった事実は消えない。
安易な救いはない。
閉じた世界はいつか終わりを告げる。
それでも世界は美しく光りつづける。
何ともいえない寂しさと悲しさを持つ不思議な世界。お勧めです。
生の大型動物たちも記録に残るだけの存在だ。
そして女たちも。
この世界の女性のほとんどは成人を前にして謎のウィルスによって死亡してしまう。
結婚が制度化され、センターが決めた配偶者との間に人工授精で生まれた子供が送られてくる。
肉体を求め合うこともない。
心を通わせる暇もなく子を育てなくばならない。
それでも人はお互いを想い、やがて夫婦となる。
それが一時の夢と消え、『同じ人』を探すことになってしまうこともあるけれど、お互いを思いやった事実は消えない。
安易な救いはない。
閉じた世界はいつか終わりを告げる。
それでも世界は美しく光りつづける。
何ともいえない寂しさと悲しさを持つ不思議な世界。お勧めです。
原因不明の病のせいで、女性は二十までしか生きられない。
地球とは接触の無いように隔離された月面都市。
動物も見たことのない、宇宙に暮らす少年たち。
そんな世界のなかで、結婚することになった少年の話。
前述の病があるため、若いうちの結婚がシステム化された世界の、ある少年の身の上話がこの作品だ。
少年の未熟さゆえに感じる思いや、友人や妻に対する新しい驚きなど、彼を通して見る世界が丁寧に描かれていた。
若いうちに伴侶をなくすことが、泣いて喚くような悲劇的なことではない。
そんな世界観を作品の所々から感じるのだが、それでも身を切るような寂しさや虚しさを、この世界に浸って味わえた気がする。
ゲラゲラ笑ったり、ワンワン泣いたりではなく、読み終わってなんだかモヤモヤと思わずにはいられない作品だった。
ジャンルはSFなのだが、ファンタジー好きにも、現代小説好きにも広く読んで楽しめると思う
地球とは接触の無いように隔離された月面都市。
動物も見たことのない、宇宙に暮らす少年たち。
そんな世界のなかで、結婚することになった少年の話。
前述の病があるため、若いうちの結婚がシステム化された世界の、ある少年の身の上話がこの作品だ。
少年の未熟さゆえに感じる思いや、友人や妻に対する新しい驚きなど、彼を通して見る世界が丁寧に描かれていた。
若いうちに伴侶をなくすことが、泣いて喚くような悲劇的なことではない。
そんな世界観を作品の所々から感じるのだが、それでも身を切るような寂しさや虚しさを、この世界に浸って味わえた気がする。
ゲラゲラ笑ったり、ワンワン泣いたりではなく、読み終わってなんだかモヤモヤと思わずにはいられない作品だった。
ジャンルはSFなのだが、ファンタジー好きにも、現代小説好きにも広く読んで楽しめると思う
未来の月面都市。遺伝子異常の病気のため、二十歳まで生きられる女性がほとんどいない中で成り立つ社会。
本作はSFである。だけど、難解さや高尚さがギラギラしている作品ではない。語り部の「僕」を通じて描かれる世界観は、あくまで静かなもの。主人公の内面描写――迷いや悩み、葛藤といったものは、私達が青春時代、あるいは日常的に抱いているものと何ら変わりない。そのため、未来の月面都市、特殊な社会形態も、スムーズに読み手の中に入って来る。
なお、本作のキーワードには「ボーイミーツガール」と「ディストピア」が含まれている。
悲劇の予感は最初からぷんぷんと漂っている。ハッピーエンドを求める読者には向かない作品かも知れない。だが、やがてやって来るだろう痛々しさを、思いっきり、生々しく味わいたい――と、そんな風に思わせてくれるぐらい、本作は丁寧なものだ。享楽的な作品に飽いた時は是非に。
本作はSFである。だけど、難解さや高尚さがギラギラしている作品ではない。語り部の「僕」を通じて描かれる世界観は、あくまで静かなもの。主人公の内面描写――迷いや悩み、葛藤といったものは、私達が青春時代、あるいは日常的に抱いているものと何ら変わりない。そのため、未来の月面都市、特殊な社会形態も、スムーズに読み手の中に入って来る。
なお、本作のキーワードには「ボーイミーツガール」と「ディストピア」が含まれている。
悲劇の予感は最初からぷんぷんと漂っている。ハッピーエンドを求める読者には向かない作品かも知れない。だが、やがてやって来るだろう痛々しさを、思いっきり、生々しく味わいたい――と、そんな風に思わせてくれるぐらい、本作は丁寧なものだ。享楽的な作品に飽いた時は是非に。
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