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伝統的ファンタジーとweb小説フォーマットの幸福な結婚

  • 投稿者: 冴吹稔   [2015年 06月 07日 11時 11分]
 無気力に陥り現世で何もなすことなく死んだ青年が、神の導きにより異世界に転生し、英雄としての人生を歩む――どれだけ繰り返されたろうか、そんな無数の物語の堆積の上に、形こそ似ているが全く異なる一石が投じられた。
 
 この「最果てのパラディン」は、そんな作品だ。

 語り口はあくまでもライト。キャラクター等、目に見える要素は実にポピュラー。分かりやすく、飲みこみやすい。
 だが描き出されるのは「伝統的」ファンタジーのそれに匹敵する、深く豊かな世界観だ。神はあくまで強大で恐ろしく、人とは隔絶した「慈悲」を抱き、魔法は定量化されたリソース管理ではなく、高度な訓練を要する制御の体系として設定され、描写される。

 そして、愛を受けて育った少年の眩しいばかりの成長と旅立ち、数多の作品が描き切れなかった「魂の再生」が見事に謳い上げられている。

 あらゆる読者に、自信を持ってお勧めしたい。
 

 

魂が震える、あなたにとっての新しい名作。

あなたは読む前にはこう思うかもしれない。
『テンプレのニート転生もの』『アンデッドで奇をてらってる』『格好付けたタイトル』

しかし、少し読み進めるとそんな先入観が間違いだと気づく。
そしてこう思うだろう。

『昔読んだ“あの名作”と同じくらい面白い!』

“あの名作”はあなたが読んだ中で最も面白かったファンタジーだ。

この作品の長所、それはキャラクター造形、戦闘シーンの描写力 .etc 。いろいろと長所はある中でもとりわけ素晴らしいのはその構成力だろう。

レビューを書いている時点では、1章の終わり、おそらくは物語の序盤でしかない。にもかかわらず、そこに繰り広げられるのは圧倒的なクライマックス、そして......感動である。

この先どのような熱い展開が主人公ウィルを、そして、われわれ読者を待ち受けているのか。楽しみでならない。
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